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#046 公共建築のオープンコンペについて

2017.11.19

今井兼次氏 設計「大多喜町役場(旧庁舎)」1959。日本建築学会作品賞を受賞しています。

先月、日本建築学会主催の 大多喜町役場 見学会に参加して参りました。 大多喜町役場は今井兼次氏の設計で1959年に竣工しました。 当時としてはとても特徴的な庁舎建築で、日本建築学会作品賞も受賞しています。 竣工後50年程を経過して、改修・増築の方向で話がまとまり、2008年にオープンコンペが実施されました。 注目を集めたコンペで、最終審査は公開され、千葉学氏の案が最優秀賞と決まりました。

当日の見学会の講師はそのコンペの審査員のお一人だったのですが、見学会参加者の一人から「公開審査傍聴者の多くは他の案の方が優れていたと感じていたのでは?」との質疑(意見?)がもたらされました。 私はそのときの公開審査を傍聴していないので、何とも分かりませんが・・・ 実際に新庁舎を見学して、私個人としては期待が大きかった分、少し拍子抜けでした。

昨年、ある公共施設のオープンコンペの公開審査を傍聴する機会がありました。 また、以前からお伝えしている 千葉県建築学生賞 などに毎年参加していて気付くことがあります。 それは審査員や出展者の何気ない一言で場の空気がその方向に流れてゆく場合があるということです。 「運」と言ってしまえばそれまでですが、やはり「気まぐれな勝利の女神」がいるような気がします。

公共建築のオープンコンペは一般的に審査員は複数で、その半数程度は一般市民・行政の代表などで、あと半数が建築・景観・環境などの専門家です。 従って、専門家の意見が通るとは限りません。 ここで重要なことは「オープンコンペ」という膨大な手間暇を掛けても、より良い建築を実現したいという行政(市民)の意思であり、建築に対する見識の高さだと思います。 オープンコンペや公開審査で最も優れた(?)案が選択出来るとは限りません。 しかし、オープンコンペではその応募作品数に拘わらず、上位の数作品はほぼ同レベルとされ、優劣を付けるのは極めて困難です。

公共建築は市民のものですから、「良い建築とは何か」を皆で考えなければいけません。 また、それは市民の「民度」をも表す結果になると思います。

千葉学氏 設計の新庁舎。正方形の平面形に対し斜めに大梁・小梁を渡し、トップライトから執務空間に柔らかい光が降り注ぎます。

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